アンビエント・ドライヴァー(細野晴臣)

ざっくり言うと、細野晴臣がアンビエント(環境音楽)の海を漂う過程で見たもの・考えたことを、音楽を軸に綴ったエッセイ集。自然観/人生観/音楽観みたいな内面がよく出てる本。2000年代に「Esquire日本版」「ソトコト」などで連載していたコラムをまとめた一冊で筑摩書房から刊行されています。
内容は音楽の話だけじゃなくて、私生活・交友関係・環境や精神への関心など、わりと守備範囲が広い。この本、細野晴臣の丁寧できままな文体が魅力で、なんというか彼の哲学の気配がじわじわ包囲してくるような読書感を得ます。

細野さんの文章って、ドヤ顔の断定じゃなくて、「今日はこう聞こえた」「こう感じた」という積み重ねと揺れが面白く、感覚のチューニングの仕方を覗き見る感じになります。結果、読み終わったあとに、エアコンの風の音にリバーブを感じたり、夜道の車の走行音にベースラインを感じたり、耳が楽しくなる一冊。

いっぽうで、尖った文章もあり一直線のストーリーを期待すると迷路に迷い込む可能性がある。でもそれこそがアンビエント・ドライブで、目的地よりも、移動中の景色のほうが主役なんだと思う。

忙しさで耳が死んでる人に効く本。読後、世界が少しだけ豊かに聞こえるようになる。そういう意味で、かなり上等な書籍だと感じた。