



経済入門としての導線がめちゃくちゃ親切。
難しい概念をわかってる人のドヤ顔じゃなくて、初見の人の脳に合わせて漫画で組み直してくるのはありがたい。心が折れずに経済に触れられる。
本書の強みとして「お金=モノそのもの」みたいな素朴な誤解を、ストーリーの流れで自然にほどいてくところだけでも。お金が何かを表す記号として社会を循環し、信用や制度、需給、政策判断の中で意味を持つ——その雰囲気を、教科書の呪文じゃなくて体感に落としてくる。目から鱗の瞬間が何度もあるのは、まさにこの説明の上手さゆえだと思う。
脱成長への反論が読み味として爽快。感情論の「節制は美徳」や「欲望は悪」みたいな道徳に、経済の仕組みの側からカウンターする場面は、背筋をスッと伸ばす。ここは良い。世界を気合でどうにかしようとする思想に、ちゃんと構造で指摘するのは大事だと思う。
しかし、読みながら引っかかったのも同じ地点で、MMTを語る割にシムズ理論に触れずに進めるのは、さすがに暴走してないか?という気分にもなる。もちろん漫画という形式上、全方位の理論史を丁寧に踏破するのは無理があるが、ただでさえ政治的な争点になりやすいMMT周辺を、単純化して述べるのは問題がある気がした。
入門としては強い一方で、偏りも目立つ。間違っていると断じるより「ここから先の地図が簡略化されてる」と読者が自覚するべきポイントだと思う。読者の頭の中で「これが経済の全体像だ」になったらヤバい。総評としては、経済の入口に立つ人にとっては非常にいい。次の一冊で視点を増やすと、この本の価値はさらに上がると思った。